スマホ教室開始しました

スマートフォンの操作方法から植木の剪定(せんてい)まで、ちょっとした家事なら何でもお任せを――。日常の困りごとを解消してもらおうと、シニア世代が地域住民を支援する取り組みが広がっている。双方を結びつけるのは、ボランティア団体や自治体。シニアが持つ豊富な経験を地域のサポートにつなげる狙いだ。

「きょうは『タップ』という言葉を覚えてください」。5月、東京都八王子市の住宅の一室でスマホ教室が開催された。集まったのは近くに住む60~80代の高齢者4人。時に戸惑いの表情を見せながらもスマホを手に熱心に聞き入った。

講師を務めたのは同市の山川正泰さん(66)だ。この日は、スマホのホーム画面への戻り方や充電のタイミングといった基本的なことから、対話アプリ「LINE」の使い方といった少し高度な内容まで、講義は約1時間に及んだ。

受講者の一人、北沢昇さん(78)は「ささいなことについては、携帯ショップのスタッフより、同世代の人の方が気軽に質問しやすい。近くに詳しい人がいてくれて、本当に助かっている」と喜ぶ。

こうした〝授業〟が実現した背景に、同市のNPO法人「めじろむつみクラブ」の存在がある。メンバーは全員が60歳以上。体力自慢のシニアと、日常家事などの手助けを求める住民をマッチングしている。障子の張り替えや電球の交換まで、活動の範囲は幅広い。

山川さんもメンバーで、2015年ごろから活動。フリーライターとして毎日のように仕事でスマホやパソコンを使っており、基本操作などに熟知している。昨春にビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」の使い方を地域の高齢者に教えて以降、月4回ほど機器の扱い方を講義する。自身にとっても「住民との交流が深まるうえ、地域のこともよく知ることができる絶好の機会」と話す。